「旅人:シュウ」の旅blog(&セミリタイア後の投資生活)

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大戸屋HDの低迷と今後は?

 

 旅行帰りだと、帰宅しても食事を作る元気は無くなっているので、その前に最寄りの外食の店舗を訪れて、お腹を満たしてから家に帰ることはよくあることですよね?

 旅人も、旅行帰りの際に、かつて住んでいた自宅の近くにあった「大戸屋」に立ち寄ってから、という場面が何度もありました。

 でも最近、元気がないと感じる「大戸屋」。

 皆さんも、「大戸屋、最近勢いがないなあ?」って思いませんか?

 

 でも実は、大戸屋は経営の混乱が続いていたのをご存知ですか?

 近年の不振は、時代の変化もあるので、経営の混迷が原因の全部であるとまでは言い切れませんが、少なくとも一因であるのは事実です。

 そこで、その経緯等を考察してみようと思います。

 

 大戸屋は、三森栄一氏が池袋で創業した「大戸屋食堂」が発端。

 でも、大戸屋を全国的な規模に広げたのは、1979年に亡くなった三森栄一氏ではなく、甥の三森久実氏なのです。

 栄一氏の養子になり、後を継いだ久実氏。

 そして、定食屋のモスバーガーを目指し、店舗スタイルの確立のため、試行錯誤を重ねた結果、国内外で400店舗超を展開する一大外食チェーンに成長させたのです。

 ところが2014年、久実氏は末期の肺がんを患っていることが発覚し、翌年、57歳の若さで死去してしまいます。

 中興の祖の急病死が、跡目争いに繋がってしまうのはよくあることですが、大戸屋も...

 大戸屋大戸屋HD)は、創業家一族で経営している一族企業です。

 筆頭株主は、中興の祖、久実氏でしたが、その持ち株比率は約18%。

 この持ち株比率は、株主総会で、否決や重要な提案をできる等、大きな力を持つ3分の1を大幅に下回っています。

 その上、久実氏が三顧の礼で迎えたメインバンク出身の相談役(元大戸屋会長)河合氏が居たという状況だったのです。

 久実氏死去直前の経営陣は、社長(現在も)が久実氏のいとこ窪田氏であり、他は親族やメインバンクから送り込まれた役員等で、その中に久実氏の長男の名前も「常務・取締役」として入っていました。

 そして、久実氏は、「ゆくゆくは息子に跡を継がせてほしい」との意思を示しながら、ついに旅立ってしまったのです。

 ところが、ここからが、大戸屋騒動物語の始まり。

    相続税対策という面から、数億円の功労金を久実氏に支払う予定も立てていた経営陣。

 でも、250億円企業にまで成長したとはいえ、競争が激しい外食業界の企業の舵取りを、カリスマの息子というだけの若輩者に、いきなり委ねることできますか?

 それも、実績ゼロで、実力不明のまま特別扱いで取締役の地位に就き、それも余命幾ばくもない久実氏を励ます為、常務にまで無理矢理昇進させた若者を、いくらカリスマ経営者の遺言だとしても、そのまま実行して社長に据えるということは、ちょっとできないですよね?

 そういうことで、実力者が亡くなれば、その影響力で得ていた特別な地位は、過半の株を持っていない以上、消失してしまうのは致し方ないこと。

 当然のごとく、暫くすると、実績ゼロの長男氏は、常務から平取締役へ降格。

 多額の功労金(8億超)支払いの話も白紙に戻ってしまいます。

 これらはもちろん、大戸屋の将来を考えての行動で、まっとうな動きです。

 しかし、こうした人事や金絡みの話に納得できず、逆に不満を溜める三森母子。

 もし、出来の良い子ならば、自身が実績がない若者であることをキチンと理解した上で、降格を受け入れ、一兵卒として修業し直し、文句を言わせないような実績を作って、周囲を納得させてから、社長の座を目指すのが普通ですよね?

 でも、こちらの長男氏は、父の死後、遺言を理由に、最初からトップの座を求めてしまうという行動に。

 ところが、思い通りにならないことに業を煮やし、ここで相続により、筆頭株主となった久実氏の妻が口出しを始めます。

 「現経営陣は、亡くなった夫に、息子を跡継ぎにすると約束していたじゃないか?功労金も支払うと。それを反故にするのか?私たちは筆頭株主ですよ?」とね。

 まあ、よくあるドラマのような展開です。

 しかし、これは逆効果。

 経営にタッチしたことが無く、相続で突如筆頭株主になった人物が、経営に口を出し始めれば、「外野が騒ぎ始めた、排除しなければ」と、経営陣は危機を抱きます。

 まして、大戸屋はFC制で、直営店よりもFC店の方が多く、経営の混迷は、FCを展開している各地のオーナー経営者の懐を直撃しますからね。

 経営陣としては、筆頭株主とはいえ、三森母子は合わせても3分の1を大幅に下回る保有割合ですから、株主総会での影響力は限定的ですので、無視して経営を進めていきます。

 もちろん、巻き返しを図って三森母子も、株主総会において、自分たちを中心とする新経営陣提案の発議を目指しましたが、支持が広がらず、最終的に頓挫、表舞台から姿を消しました。

 

 その後、このお家騒動に、大きな動きはありませんでしたが、大戸屋は柱石と言える実力者を失ったことで、経営状況は悪化していきます。

 人件費を始め、各種コストの高騰もあり、競争の激しい外食業界ですから、売り上げが伸びなくなると、利益もほとんど出ない体質に...

 その上、アルバイト店員に、動画投稿サイトへ、店舗の設備や食材等を使ったふざけた動画を投稿されてしまう「バイトテロ」も食らって、客足の減少が止まりません。

 ですから、元気がなくなってしまったと感じるような状況に陥ってしまったのです。

 利益が出なくなると、経営陣はまず、立て直しのために最も手っ取り早く効果が出る、コストカットに走るようになります。

 ところが、コストカットが進むと、業務の細かいところまで縛りが強くなり、余裕がなくなるので、それに嫌気がさした従業員達の意欲が落ち、あらゆる面での質が低下します。

 そして、質の低下で客離れが始まり、ますます利益が出なくなり、新規投資資金が少なくなるので、メニューの斬新的な刷新も出来ず、店舗の改装費等も出せなくなって、客数がさらに減少するという典型的な悪循環に陥ってしまったのです。

 経営不振で業績が右肩下がりにもかかわらず、中興の祖である久実氏の意思を無視し続ける現経営陣に対する不満は、当然、三森母子も抱えたままです。

 ただ、18.6%程度の保有割合では、株主総会で提案しても否決され、何も変えられないのも事実。

 そこで取った、三森母子の最終的な行動とは...

 

 それは、なななんと、2019年10月1日付で、三森母子は、保有する大戸屋HD株(保有率18.65%)の全てを、外食業界の大手「コロワイド」に売却してしまったのです。

 自分たちの意見が通らないのなら、金に換えて縁を切るという選択をしました。

 この三森母子の判断、経営権を奪還する実力がない以上、相続税も株券を担保に借金して支払ったようですし、最良の選択と言えるかもしれません。

 しかし、夫(父親)が大きくした会社の株を、黙ってライバルの同業他社に売ってしまったという部分については、現経営陣に対する怒りから起こしたものでしょうね。

 コロワイドは、売上高年間2500億円を超える大企業。

 大戸屋の10倍の売り上げ規模を誇ります。

 大戸屋は、カリスマ経営者の死後、経営不振で、今期は利益ゼロ予想の低空飛行状態ですから、筆頭株主となったコロワイドが大幅なテコ入れをする可能性は、かなりの確率でしょう。

 最終的に、業務提携だけなのか、それとも敵対的買収か、友好的買収か、その行く末は分かりませんが、2割近い株式を30億円前後の資金を投じて買い取った以上、何らかの動きがあるでしょう。

    大戸屋物語、この続きはどうなるのでしょうか?

    また勢いを取り戻せるのか、それとも衰退が止まらないのか。

    「あの繁盛店が…」という場面もよく見かけるほど、外食業界は極めて競争が激しく、栄華盛衰の繰り返しの世界ですから、今後の動きに要注目でしょうね。