「旅人:シュウ」の旅blog(&セミリタイア資産運用)

旅の資金は、投資利益で捻出している旅人です。旅妻が大病を患ったことを契機に、世界旅へ(新型肺炎の為、延期)。セミリタイア家計簿も。

日産株について

 

 先週の決算発表で、3回連続の下方修正と減配を発表した日産(7201)。

 今日は臨時株主総会開催日で、新経営陣を決めたという状況ですね。

 特に今回は、減配では無く、無配転落ということで、翌日は9%超安と急落しました。

 旅人としては、「流石に、昨年の5・8・11月の決算発表後3連荘安だったから、今回は大きな下げは無いかな」と思い、事前に空売りを仕込みませんでしたが、今回が一番大きな下げとなったので、「もう一丁狙えばよかったなあー」と臍を噛む結果となりました。

 黒鉛バブルが弾けて、大幅減益見通しを発表した東海カーボン(5301)ですら、今回は小幅安止まりだったのに、どうして日産株は大きく下げて、ここまで凋落したのか、その点を分析してみましょう。

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日産・グローバル本社(横浜)

 日産は、バブル期に「トヨタに追い付け追い越せ」と過大な販売目標を立て、生産台数を増やそうと、巨額の設備投資をしたものの、バブル崩壊で販売台数が急減し、この設備投資があだとなって、倒産の危機に陥りました。

 そこで登場したのが、フランスのルノーです。

 ルノーは、当時業績好調で、F1に積極参戦する等、かなり余裕があったので、支援を求めた結果、1999年に6千億円超の巨費を投じて第三者割当増資に応じ、日産はこの資金で余剰設備の廃棄やリストラをすることが出来たわけです。

 また、筆頭株主となったルノーは、日産立て直しのために、若手の有望株を送り込んできました。

 それが、カルロス・ゴーン氏です。

 日本人経営者では、能力不足や覚悟の無さで出来なかっただろうという規模の、大胆なリストラや設備廃棄、資産売却や調達コストの見直し等、あらゆる面で日産という企業の実力に見合う体制に改革した結果、黒字化して有利子負債の削減にも成功し、立ち直ったのです。

 それから、約20年。

 トップは交代することがなく、革新性が失われ保守的になり、経営方針や目標もマンネリ化して、長期政権の弊害が大きく出てくるようになります。

 ゴーン氏は日産の立て直しに成功し、それが評価されてルノーの経営者も兼務するようになりますが、日産にしろルノーにしろ、その地域でナンバーワンの自動車メーカーではありません。

 厳しい言い方ですが、日産は日本では二流メーカー、ルノーもEU圏で二流です。

 その評価は、改革が成功して一定の利益が出る巨大アライアンスになったといえども、残念ながら変わりません。

 世界の評価ですと、一流自動車メーカーは、ベンツ・BMWトヨタ・VWアウディ等です。

 その次は、フォード・GM・ホンダ等となります。

 日産・ルノーというアライアンスは、その下のランクに位置し、世界ではFCAや現代自等と同じ評価でしかありません。(日本国内ではもう少し上の評価ですが)

 ですから、格上のライバルと競うには、多額の販売奨励金の付与という事実上の大きな値引きをしなければ、自動車が売れないわけです。

 そして、製品に対する世界的な評価が低いから、中古車として売却する際の査定価格も低くなります。

 アメリカですと、中レベル以上の同クラスの中古車で比較した際、日産車はトヨタ車の3000~5000ドル安という査定が平均値と言われています。

 その評価の差が、業績にも表れているわけです。

 日産・ルノートヨタ系の世界販売台数はほぼ一緒ですが、業績は雲泥の差です。

 日産・ルノーにはトヨタの3分の1しか利益を出す力が無いのです。

 これは、販売台数が半分のホンダすら下回るレベル。

 これが実力なのです。

 しかも、そういうアライアンスを率いるゴーン氏には、特別な才能が眠っているというまでの凄い人物ではなく、「まあまあの経営者」という程度の評価で固まっていたわけです。

 だからこそ、「自分たちはもっと凄いんだぞ」と、実力以上に背伸びをして、ライバルたちと戦い続けざるを得なかったということになるわけですね。

 三菱グループですら匙を投げて、積極的に支援しなかった、燃費不正で危機に陥った不祥事の常連「三菱自工」に対して、ゴーン日産が手を差し伸べた理由は、行き詰まっていた日産・ルノーの業績を一時的に上げるための格好の材料に映ったからなのでしょう。

 三菱自工は東南アジアで一定の知名度と人気があり、東南アジアでしか利益が出ていない弱小自動車メーカーですが、そうした特定の地域で強いことも傘下に収めた理由でしょう。

 でも、図体だけがデカくて、実力の低いアライアンスに、弱小メーカーが参加したって、劇的に変わるはずがありません。

 

 このように、日産・ルノー三菱自工の連合は一昨年、自動車販売台数世界一となり、「世界一」の称号を得ることが出来たものの、利益率が低く、収益力は他社に大きく見劣りします。

 しかも、日産の社員は昔から上から下までプライドが高く、「自分たちはトヨタと並ぶ一流メーカーだ」と思い込んでいるから、現在のような脱ガソリン車という大きな変革に差し掛かった厳しい時代に、

 「弱小ルノーには飲み込まれたくない」

とプライドの高い悪い面を発揮して、元経産省高級官僚社外取締役T氏を通じて日本政府(経産省)に、ルノーによる統合阻止の支援を求めた結果、ボスを逮捕させて、経営を迷走させ、業績も低迷という、非常にレベルが低い社内抗争をしてしまったというのが日産の現状なのです。

 一連のゴーン騒動ですが、本来、ゴーン氏に不正があったのならば、経営陣が自浄能力を発揮して取締役会なり、株主総会なりで解任し、その後告発するのが正道です。

 それが出来ずに、逮捕させてから追放するという異様な方法しか選べないのですから、今後、現経営陣がこの弱小アライアンスを世界市場という厳しい戦場で、収益を確保しながら生き残れる道を示せるとは到底思えないですね。 

 今、日産は業績不振の全責任をゴーン氏に押し付け、過大な生産能力を削るリストラを始めているので、一時的にはその効果が出て、利益が回復するかもしれません。

 しかし、今まさに、ガソリン車以外の開発や自動運転車の開発を急がなければならないという「100年に一度の変革の時代」を迎えた自動車業界で、権力争いに現を抜かして、経営を迷走させているツケは、リストラ効果が剥げると、必ず出ることになるでしょう。

 

 そういえば、日産の次期CEO候補と言われていた関氏が、数か月前に日本電産に突如引き抜かれて移籍してしまい、日本電産の社長に就任することになりましたが、エースと言われた人が自社の社長の座を捨てて、規模の小さな他社の社長に就くということは、それだけ日産に魅力がない(政治の力を頼ったことで、社外取締役T氏の権力が強まり、今後政治の介入が続いて、思うように経営できないとみての移籍でしょう)という、現在の日産の内部事情が透けて見える象徴のような出来事がありましたね。

 

 株の世界で最近では、規模の小さなスズキやスバル以下の評価でしかなく、高配当という部分しか魅力の無い株でしたが、大事な時に権力闘争をした結果、好配当が剥げた以上、株価が下がり続けるのは当然のことなのでしょうね。

 ただ一つの疑問は、4.8兆円の利益剰余金があるのに、今下期の配当を無配にした理由です。

 これだけの利益剰余金があるのですから、長期間配当を支払う余資があるのですし、通常は減配しても、無配にはしません。

 配当の実施は、株主に対するある意味義務ですからね。

 今回の決算発表での、この無配が意味するものとは、何なのでしょうか?

 これは今後、自己資本の相当な棄損が生じる可能性を指し示しているのだと思います。