旅好きなならば、皆さん一度はお世話になったことのあるだろう、日本の海外旅行大手の「HIS」。
旅人も、大半の海外旅行をHISで行ってました。
現在では、最大手のJTBと並ぶほどの海外旅行取扱高なのですが、新型肺炎の影響が直撃してしまい、資金の流出が続いています。
一昨日に決算発表をしましたが、前回に大幅下方修正をしていた今期予想を撤回してしまいました。
撤回したというよりは、あまりにも状況が厳しく、発表できなかったと言った方が正確なのだと思います。
これは個人的な推測ですが、当面、海外旅行再開の見込みが全く立たないことから、2020年10月期決算の数字は、
営業利益 ー250~ー300億円
純利益 ー200~ー300億円
(リストラ特損次第では、更なる赤字拡大もありうる)
位の大幅赤字転落でしょう。
その理由は、次の一覧表を見れば、分かると思います。
下の表は、HISが発表している海外旅行取扱高です。
これをみると、2019年には月平均で350億円もの海外旅行取扱高があったのが、新型肺炎の影響が出始めた3月から急減し、4月はわずか4億6500万円に。
そして現在のところ、海外旅行再開の見通しが全く立っておらず、7月以降も4月と同様の状態が続くでしょう。
既にオーストラリア政府は、観光目的の入国許可再開は、早くても来年になるとの見通しを発表していますし、ごく一部の国を除いて海外旅行を年内に再開できる可能性は、ほぼゼロだと言えます。
そして、HISの最大の問題は、次の表をみればわかります。
こちらは、HISの国内旅行取扱高です。
月平均だと50億円前後。
海外旅行に比べると、僅かな金額でしかありません。
ここが、国内の同業他社との相違点なのです。
例えば、同じ上場企業のKNT-CT(近畿日本ツーリスト・クラブツーリズム)では、取扱高の内訳が「国内7割・海外3割」です。
最大手のJTB等も同様で、他社は売上げに占める国内旅行の割合の方が、海外旅行よりも大きいので、国内旅行さえ再開できれば、現金が入ってくるため、利益は出なくとも、資金の流出を抑えることが出来て、人員も維持して、何とか糊口をしのげます。
ところが、HISは、国内旅行の売上げ比重が小さすぎ(15%しかない)で、HTB(ハウステンボス)やホテル・九州産交・発電事業等の子会社もありますが、HTBやホテル子会社も、新型肺炎の影響が直撃していますし、これら子会社群では本業の海外旅行壊滅分を補うことが出来ません。
海外旅行が再開できない限り、肥大化した海外旅行部門の人員の維持のため、資金流出が続くので、このままだといずれは非常に苦しい状況に追い込まれることになるわけです。
その上、
300億円をかけて、新本社に移転する計画(今年6月に移転済み)
中での、新型肺炎襲来ですから、踏んだり蹴ったりの状況だったのです。
HISの株価ですが、2月以降大きく下げたものの、1000円は割れずに、一旦大きくリバウンドしましたが、再び下げ転換して大きく下がったのは、HISだけが抱える、
「国内旅行が弱小+タイミングの悪い新本社移転」
という特殊な状況があるということなのです。
HIS側でも資金流出が続いていることは認めており、資金残高が
2019年4月末・1243億円→2020年4月末・650億円
へと大幅に減少したと発表しています。
HISは、新型肺炎危機が発生するまで、剰余金をかなり保有している優良企業だったので、もちろん直ぐに潰れるようなことはありません。
ただし今回、大規模なリストラを発表し、特損の発生が見込まれる上、資金の流出が止まらないことから、株価の本格的な反転は、まだだいぶ先のこととなりそうです。
でも、新型肺炎が収束の見込みが立てば、株価が大きく下げている分、リベンジ消費も入って、海外旅行が急増し、株価も大きく反発するでしょうから、注目しておくべき銘柄だと思います。