伊藤忠商事による、ファミリーマート株のTOB期限が月曜日と迫ってきました。
現在、伊藤忠商事とその関係会社は、ファミリーマート株を約50.1%保有しています。
そして、今回のTOB成立の条件は、伊藤忠商事の保有割合が60%超でOKという、かなり低い条件で成立することになっています。
通常のTOBであれば、3分の2以上の議決権を保有できる割合に下限を設定するところですが、今回は発行済み株式の約10%分の応募があれば成立するのです。
これだけの低い条件ならば、TOB成立確実のように見えますが、実はファミリーマート株には、いずれ日本の株式市場が長期低迷に陥る原因となるだろう陰による影響が浮き彫りとなってきており、その為、10%分の応募が必ずあると保証される状況では無いのです。
陰とは、将来大きな負の遺産となる可能性を秘める、巨額の日銀ETF買いの弊害です。
ファミリーマート株は、2016年8月に、ユニーとの合併に伴い日経平均株価に採用されましたが、ユニー傘下のサークルKサンクスを吸収合併することにで、コンビニ業界2位への躍進というポジティブサプライズと、日経平均採用に伴う買い需要が重なって、元々高株価銘柄だったこともあって、株価が更に急騰し、日経平均におけるウエイトが非常に大きい銘柄となりました。
当時の日銀ETF買いは、日経平均ETFを中心に買っていた為、浮動株の少ないファミリマート株の発行株数に占める、日銀の保有割合が急上昇してしまったのです。
更に、今年のコロナ危機で買い入れ枠を倍増させ、時価総額が大きくて浮動株の少ない高株価銘柄は、日銀の保有割合が上がる一方なのです。
現在、日銀が保有するETFによるファミリーマート株の保有割合は発行株数の約20%。
また、MSCI等の、他のインデックスETFによる保有割合も10%程度あります。
伊藤忠 約50.1%
ETF等 約30%
となります。
そして基本的にETFは、TOBに応募しません(指数の連続性維持の為)。
ですから、今回のTOBは、伊藤忠とETFの保有分を除いた、残りの20%のうち10%以上の応募があるかどうかで成立が決まるのです。
今のところファミリーマート株を保有する外資系のファンドは、「TOB価格が安い」と反発しており、応じない可能性が高い状況です。
(前回の伊藤忠によるファミマ株TOB時は、11000円(分割換算で2750円)でした)
また、TOBの発表後、一昨日迄、TOB価格の2300円を上回る株価だったので、応募状況が芳しくない可能性もあります。
巨額の日銀ETF買いが、実はファミリーマート株のTOB成立の阻害要因となっているのです。
(しかし、コロナでコンビニの売り上げが落ちて株価もだいぶ下がっていたのですし、ファミリーマート株を保有する大株主の生保や損保・ドコモは、TOBに応じるでしょうから、おそらく10%以上の応募はあるだろうと推測されます)
TOB価格である2300円は、まずまずの値段と言えます。
今回のTOBは伊藤忠としては渋々だという情報も流れていますが、ファミリーマート自体の業績も頭打ちで、株価は下がり続けていましたし、伊藤忠としても過去の高値でのTOBのツケを今後の決算で損失計上したくないでしょうから、親子上場の批判もあるので、今回のTOBで上場廃止にしたい気持ちが、かなりあるのだと思われます。
TOBが成立すると、ファミリーマート株は上場廃止方針で、そうなると日経平均の銘柄の追加の発表が行われます。
また、9月初旬には、日経平均の定期入れ替えも発表されます。
(今回の除外候補筆頭は、日本化薬です)
今回のTOBの結果は、早ければ25日にも発表され、TOBが成立すれば株価が動く大きなイベントに繋がりますので、注目しておきたいですね。