「旅人:シュウ」の旅blog(&セミリタイア後の投資生活)

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豊田自動織機、まさかのディスカウントTOBに

 TOB

 株式公開買い付け。

 

 昨日(6月3日)の引け後、豊田自動織機TOBの受け入れを正式発表しました。

 その価格は1株16300円。

 同日の終値は18400円でしたので、大幅なディスカウントという結末。

 有名な個人投資家も、やられたと言われています。

 

 買い付け総額は約4.7兆円。

 事前の各社の報道では6兆円前後でしたので、かなりの誤差が出ました。

 もう少し各社の記者は、正確な数字で報道して欲しいところですね。

 

 個人的にも、このTOBの価格について、正直言って安いと思います。

 豊田自動織機自己資本だけで約4.9兆円もあります。

 また、特に保有株の含み益が莫大で、一時期よりはだいぶ減ったものの、トヨタ株を中心に今でも4兆円前後の価値があるのです。

 これらをトータルすれば約9兆円の価値のある企業ということになります。

 有利子負債を差し引いても、報道にあった6兆円前後のTOBであれば、それなりに適正な金額だと言えますし、多くの人が大きな損失無く終われたのに、あえてそのような判断をしなかったということには訳があるのでしょう。

 

 

 発表後の、市場関係者、各社アナリストたちの反応ですが、総じてネガティブというところ。

 豊田自動織機の実質的な価値に比べれば、安い価格で実施することや、報道が先走りしたとはいえ、3日終値より11%以上低い価格での発表を是とする意見はほぼ皆無。

 日本を代表する企業グループが、やや割安な価格でのTOBを、適正だと言い張っていることに、今後への影響を懸念する声が多いようです。

 この価格にした根拠が全く見えない、開示不足という厳しい批判も出始めています。

 

 前々から、豊田自動織機はアクティビティストに狙われやすいと言われていました。

 それは言うまでもなく、トヨタグループの祖業企業として、大量に保有するトヨタグループの株式の価値が株価にあまり反映されていないからです。

 最近では、海外の物言う株主から狙われ始めており、対応に苦慮していた。

 そのため、今回のTOBとなったのですが、蓋を開けたらまさかのディスカウントTOB

 単価の高い株なので、1枚でもかなりの損失発生という結果に😢

 

 豊田自動織機としても、今回のTOB価格は、流石に少し低いと思っているのでしょう。

 通常、株主には応募推奨という意見を表明するのですが、今回は中立(応じるかどうかは株主の判断に委ねる)となっています。

 中立という時点で、安いと半ば認めていると言い換えることもできますね。

 

 

 どうしてディスカウントTOBという形になってしまったのか?

 その点を少しひも解いてみます。

 それは、今回のTOBの実質的な実施者が豊田章男と豊田家という点にあると思います。

 事前報道ではトヨタが資金を出して実施するような内容でしたが、結果は優先株での出資のみ。

 トヨタが兆円単位で出資した場合、トヨタ株主からの批判が大きくなることを恐れて、優先株7500億円にとどめたのでしょう。

 豊田家が支配するトヨタ不動産がTOB実施の主体です。

 トヨタの会長豊田章男は、マスコミ嫌いで有名。

 日本経済新聞社との感情的なしこりも持っておられるようです。

 アクティビティストのことも当然嫌っているでしょう。

 そのため、わざと6兆円という数字を流したのではないかと疑われても仕方ないと思います。

 

 その意図は...

 豊田家とトヨタグループの資産を狙うハゲタカ(アクティビティスト)に損をさせてやろう。

 ついでに嫌いなマスコミに恥をかかせてやろう。

 そういう目的があって、6兆円という数字が章男氏の関係者から出たのではないかと。

 そんな疑いもゼロとは言い切れないですよね?

 記者もバカではありません。

 それなりの関係者から、この数字を引き出したからこそ、記事にして流したのです。

 根拠があっての数字だった筈でしたが...

 株絡みで、数字を大きく外した記事を流した場合、損をした投資家から苦情が出ます。

 今頃、日経を中心に、6兆円という数字を出していた数社には、大きな損を出した投資家から苦情が入っていることでしょう。

 記事の信ぴょう性も、今後大きく揺らぐことになりますからね。

 

 

 今後の展開ですが、

 TOBの成立は今後の株価の推移次第でしょう。

 章男氏には、成立の目算が立ったからこそ、ディスカウントという決断を下したものと推察されます。

 批判は覚悟の上での格安価格でのTOB

 大株主であるデンソー、アイシン、豊田通商トヨタ不動産は、TOBへの応募を表明しています。

 トヨタ不動産は利害関係者なので???という感じもしますが...

 持合い解消に力を入れている損保各社の保有分も、間違いなく応じるでしょう。

 これらを合わせると、トヨタ保有分を合わせて、議決権3分の2に一定程度近いところまで行っていると思われます。

 一方、ファンド保有分の大半は、この価格ではおそらく応じないでしょう。

 

 TOB実施時に、株価が16300円を上回っていた場合、どうなるのか?

 物言う株主の中で、揺さぶるチャンスがあるとみるところがあれば、TOB価格の引き上げを狙って、仕掛けるところがあるかどうか。

 16300円を常時上回るような状況になれば、成立しない可能性も。

 豊田家と資金面で勝負する大ファンドがあるのか?

 そのあたりで、成立するかしないのかが決まるものと思われます。

 

 

 どちらにしろ、TOBが始まるのは12月以降。

 中国当局の承認を得るには、1年前後の時間が必要である場合が多いので、おそらく12月に開始できる可能性、ほぼ無いと推察します。

 大体、目安は1年後。

 最近の例でいえば、

 新光電工はTOB実施発表から約1年2か月後、JSRは約11か月後。

 タツタ電線は、なんと約2年後となりました。

 かつて、ホンダが部品子会社の3社同時にTOBをかけたことがありましたが、これも1年ほど時間を要しています。

 

 

 今回の豊田自動織機TOB発表。

 報道内容や、豊田自動織機の資産価値、トヨタという企業の看板等から、一定程度のプレミアが期待できると計算したものの...

 残念ながら、損失を被った方も多いことでしょう。

 自分もやられました。

 振り返ってみると、今回のTOBの目的は、あくまで豊田章男と豊田家の資産を守るために実施されるということに、こうなった原因があるのだと思います。

 事業拡大とか、最近多い親子上場解消とか、そういう目的ではなく、資産防衛が最大の目的でのTOBだったということです。

 目的が目的だけに、あまりにも高い価格を付けることはできない。

 TOB価格が高すぎれば、資産防衛の目的を十分に果たせないどころか、TOB成立後は豊田家の企業となる豊田自動織機に大きな借財だけが残ってしまうのですから。

 しかも章男氏は、トヨタの社長になった時、アメリカで批判の嵐の洗礼を受けて以後、マスコミと対立する場面が多くあり、上述したような鬱屈したものも持っていると言われています。

 (トヨタイムスは、マスコミを通さず自己主張をするという強い意思が如実に表れた例)

 

 日経が出した数字は、おおむね正解の場合が多いのですが。

 今回の負けの反省を生かして、次の機会を窺いましょう。