「旅人:シュウ」の旅blog(&セミリタイア後の投資生活)

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再びFRB緊急利下げ、でも...逆効果?…

 

 日本時間の早朝(アメリカ時間では日曜日の夕方)に、FRBが緊急利下げを発表しました。

 そして、その下げ幅は1%と、市場の予想を上回るもの。

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 でも、これって、タイミング悪すぎじゃないの?っていう感じがします。

 

 金曜日のNY株は、終盤まで反発してはいたものの、弱さも見え、不穏な空気が流れていました。

 ところが、本来ならばネガティブ材料になるはずの大統領による「国家非常事態宣言」を理由に、最後の1時間で約1300ドル上げました。

 これは明らかに、売り方に対する買い方の仕掛けと見るべきでしょう。

 数日後にFOMC(での利下げ)もあるので、今までの急落に対する大きなリバウンドの発生を恐れている売り方が多い状況を利用して、買いで仕掛けた大口が居たということなのです。

 ですから、そのまま何もなければ、NY株は今日も続伸した可能性が高かったでしょう。

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 ところが、急速な感染拡大に危機感を抱いていたFRBが、3日後のFOMCを待てずに今朝、緊急利下げ、それも1%と最大幅の利下げをしてしまったので、これで金利を下げる余地がほぼ無くなりました。

 最悪「マイナス金利を導入すれば?」と言っても、マイナス金利に景気浮揚効果は無く、下げてもー0.5%程度までの深堀りが限界で、それ以上引き下げると、金融仲介機能を担う金融機関が軒並み経営危機に陥ってしまい、逆効果になるという真実を、ECBや日銀のマイナス金利政策が如実に示していますからね。

 

 ですから、今回のFRBの利下げで、「これでもう世界の主要な中央銀行は打つ手が皆無となった、アメリカの新型肺炎恐慌がピークになる直前まで、安心して空売りが出来る」と、投機筋が再度売り仕掛けをする最大の理由となってしまうでしょう。

    3日後のFOMCを待つことが出来ない程の危機的状況なのだという、売り方に有力な理由付けも出来てしまう緊急利下げですからね。(日銀も同じです)

 

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 先週木曜日の歴史的な急落は、ECBが理事会終了後に効果的な金融政策を何も発表できず(これは事前予想通りなのですが)、完全に行き詰ったという事実を世界に示したことで、投機筋の新たな売り仕掛けが入ったことが大きな理由ですからね。

 世界の投機筋は、各国政府や中央銀行の足元を見ながら、上下に仕掛けているのですから。

 

 そして市場混乱の最大の問題である新型肺炎の世界的蔓延ですが、イタリアは中国・湖北省以上の悲惨な状態に突入しました。

 感染者が多すぎて、治療を受けられず、亡くなる高齢者が続出。

 次は、スペインが同じような状況になるでしょう。

 更には、フランスも、イタリアのようになりつつあります。

 他にはイギリスとドイツも危ないです。

 その他ヨーロッパ諸国も軒並み、湖北省やイタリアのようになる危機に直面しています。

 

 そして、なんといっても今後の、新型肺炎感染拡大の最大の問題国は「アメリカ」です。

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 残念ながらアメリカでは、現政権が新型肺炎を軽視し過ぎて、初動対応が完全に遅れたので、今後、イタリア以上の悲惨な状況になるのは確実です。

 アメリカは貧富の差が激しく、国民皆保険制度もありません。

 バブル崩壊後、日本人は等しく貧しくなりましたが、それでも皆保険制度があるので、日本国民の大半は良質の医療を受けることができます。

 でも、アメリカ人はそうはいかないのです。

 医療保険に入っていないと、高額な医療費を自己負担しなければなりません。

 だから、貧しい人は体調が悪くなったって、せいぜい薬を買うだけで、大病を患っても、病院で高額な治療を受けることはできないので、もし新型肺炎に感染して症状が悪化しても、大した治療は受けれないまま過ごすしかないですから、結果的にウィルスを市中にまき散らしてしまうのです。

 今、アメリカの民主党は、新型肺炎検査費用無償化や失業対策等の包括的対策法案を出し、これは直ぐにも議会で承認される見込みですが、これは、そうしたアメリカの医療の実情を憂慮し、せめて検査だけは受けさせようというもの。

 また、遅れていた検査体制も一気に強化が進んでおり、韓国同様のドライブスルー検査も開始されました。

 でも、検査が無料で、簡単に受けられるということになれば、検査実施数が急速に増えることになるので、爆発的な感染拡大の実態を追認するだけのこととなり、パニックが発生するのも確実です。

 そうなればアメリカは、カナダ以外の国境を閉鎖し、完全に人の移動を禁止する措置を最低でも8週間は取らざるを得なくなるので、その時世界の株価は再び大きく下げるでしょう。

 おそらく、あっという間に、アメリカはイタリア並みの厳しい状況に追い込まれてしまうので、今、少しばかり株価が反発しても、持ち越すのはかなりのギャンブルだと思います。

 

 ヨーロッパもアメリカも、新型肺炎の感染力を甘く見ていました。

 これは世界中の人達の大半が、甘く見ていたのだから致し方ありません。

 また、アメリカのCDCも当初選択した検査方法に問題があり、検査体制の拡充も大幅に遅れました。

 こうした悪条件がいくつも重なり、イタリアでの爆発的な感染が始まってから、アジア以外の各国が大騒ぎし始めましたが、完全に手遅れ状態です。

 そして、アメリカは皆保険制度では無いので、「貧乏人は高度な医療を受けない」という前提で作られているアメリカの医療体制は脆弱です。

 肺炎治療に不可欠な呼吸系の高価な医療機器類は、あっという間に足りなくなると言われています。

 このような非常に厳しい状況ですから、来週末までには、アメリカ国内の感染者数は数万人、死者は1000人を超え、いずれイタリアや湖北省に匹敵若しくはそれを超える状況に陥るでしょう。

 

 既にEUでは、デンマークポーランドチェコに続いてドイツも国境閉鎖を決めました。

 これらの国境閉鎖は、感染流入を止めるだけではなく、物資買い占め騒動が国境を越えてなだれ込むのを防ぎたいという意図も大きいようです。

 しかし、EUの盟主ドイツが国境閉鎖(陸路)を決めたので、陸続きの国は次々と国境を閉ざすでしょう。

 そうなれば、世界経済はますますダメージを受けてしまいます。

 そこに今後、アメリカが同様の措置を取ると見込まれるのだから、当面、世界経済や各国の株価は、非常に厳しい状況に追い込まれると思います。

 いまや、中南米やアフリカ諸国、アジアの国々も、EUやアメリカのやり方を真似し始めていて、次々と国境を閉鎖しています。

 ですから、これから3か月程度は、リーマンショックを遥かに超える、急速な世界経済収縮の危機に突入するということになります。

 

 日本についてみてみましょう。

 日本は感染者数が一気に増える状況にはなっていませんが、これは検査を選別しているからです。

 この検査実数の異様な少なさは、徐々に海外からの批判が出始めています。

 和歌山県を除く大半の自治体では、消極的な検査姿勢を維持しており、軽症者はなるべく検査を受けさせず、中等症以上で顕著な症状が出た感染の疑いが濃い者か、その濃厚接触者に絞ってPCR検査を実施しているだけなので、他国に比較すると感染者数の伸びが低くなっています。

 検査数が極端に少ないのだから、把握している感染者数も少ないのは当前です。

 でも、既に壱岐のような離島でも、経路不明の感染者が見つかったように、間違いなく日本における感染は、私たちの身近な人達の直ぐそばにまで広がっています。

 この日本の検査選別方式は、感染者が急増することで発生する医療崩壊を防ぐには有効ですが、一方で軽症者・無症状者の把握とその行動抑制は出来ないことから、感染の広がりを止めることは出来ません。

 ですから、感染者の暫増傾向がこのまま続くでしょう。

 「イタリアや韓国のように、疑いのある者全員を検査すれば、感染者数が増えすぎて医療が崩壊してしまうからやるべきではない」という理論にも一理あると思います。

 でも、無自覚な軽症者を野放しにしたままにしていては、感染を止めることはできないでしょう。

 だから日本では、4月を過ぎ、5月に入り、その後6月になっても、一定数の新規感染者が発見されるという状況が続くことになると見込まれます。

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 そして、開催がどうなるのか世界中で話題となっている東京オリンピックですが、現状のあまりにも酷い世界の感染拡大の情勢を見れば、残念ながら、計画通りの日程での開催はほぼ不可能です。

 もし、このまま予定通り開催を強行出来たとしても、来日する観客は予想を大幅に下回り、それも激減レベルに留まるでしょうし、国単位での選手派遣拒否や選手個別のボイコットも相次ぐでしょう。

 開幕まであと4か月しかないのに、アメリカや中南米諸国やアフリカ、南半球といった国々では、これから爆発的に感染が広がると予想されているのですから。

 

 それに、IOCと東京オリンピック委員会の契約書では、「万が一開催の可否に判断を要するような事態が生じた場合には、60日前までにIOCが通告する」という旨の取り決めがなされています。

 ですから、今、なんだかんだ色々な話も出ていますが、現実的な可否の決断までの時間的猶予は、最大2か月しか残されていないのです。

 現状では、2ヶ月後に、世界の新型肺炎の感染状況が劇的に改善している可能性は、ほぼゼロでしょう。

 例えば、イギリス政府は、イギリス国内の感染のピークは5・6月と予測しています。

 もし、今年の7月に無理矢理開催しても、日本国内に落ちる経済的な恩恵は大幅に縮小してしまい、オリンピック特需は事実上消滅してしまうということになります。

 そういう状況ですから、現実的な最良の選択肢は「延期」の一択なのです。

 中止は、開催予定国の経済に極めて大きな禍根を残しますので、選択肢としてはないでしょう。

 

 そして、最大のポイントはオリンピック開催の決定権はIOCが握っていることになっていますが、その裏にもう一人決定を左右する存在が居るのです。

 それは、IOCに巨額の放映権を支払っている、アメリカの巨大メディア企業「コムキャスト」。

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 オリンピックの放映権は、コムキャスト傘下のNBCが巨額のマネーをIOCに支払って長期契約で獲得しています。

 ですから、コムキャストが、無観客開催で良いと判断すれば、IOCはそれに従うだけです。

 同様に、コムキャストが1年若しくは2年の延期が良いと判断すれば、IOCはそれに従うだけです。

 そういうわけで、いくら日本の政治が「予定通り開催だ」と強弁を言い続けても、日本に開催決定権は全く無いので無意味です。

 現実的にはコムキャストが、他に放映権を持っているアメリカ4大スポーツやその他国際的スポーツイベントの開催予定等のスケジュールを総合的に鑑みて、オリンピックの開催日程を決めているのですから、決定権はコムキャストにあるのです。

 だから、日本の政治家やオリンピック委員会は、コムキャストに対して「無観客ではなく延期でお願いします」と懇願すべきなのです。

 これは、もう、今からやらなければダメです。

 コムキャストとすれば、最悪、放映できれば良いだけなので、無観客開催でも構わないのですから。

 日本の政治家も国民も、オリンピック委員会も、現状から目を背け続け、「予定通り開催」に固執するのではなく、経済的な損失が最も少なくて済む、「延期開催」に向けて、今から最大限運動し、努力すべきだと、個人的には思います。

 そういう訳で、今後2ヶ月間の日本株には、新型肺炎だけではなく、日本における今年最大の経済的イベント「東京オリンピック」の需要が消滅するというマイナス効果を考慮し、開催の方向性が決定するまで(延期と決まれば、それまで売り込まれていた株は大きく上がるでしょう)は、積極的なロングポジションは取らない方が賢明だと思います。