「旅人:シュウ」の旅blog(&セミリタイア後の投資生活)

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昨日・今日の日本株買いの主体はGPIF?

 

 昨日から今日の終盤にかけて日本株は、一部の大型銘柄が異常な上昇をしており、異様な値動きが続きました。

 特にこの2日間、トヨタソニー・OLCの3銘柄の異常な高騰が目立ちましたね。

 TOPIXは、昨日今日ともに上昇で、2日間で最大7%上がったのに、日経平均は昨日も今日も一瞬2%高があったものの、結局2日間でマイナスという結果でした。

 この極端な歪の原因は一体何なのでしょうか?

 その答えは、「GPIF」です。

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 昨日今日と市場関係者からも、「年金が一部銘柄をかなり買っているようだ」との声が出ています。

 世界的な株価の急落で、当然のことながらGPIFも巨額の運用損を出しており、2019年12月末と比較すると、現在約20兆円超の損失を出していると推定されます。

 損を出しているのに、新規に株を買う金があるというのは、本来おかしな話ですが、GPIFは運用割合が決められているので、その運用割合を維持するためという理由付けで、日本株を買うことができるのです。

 そのカラクリ・原理についてお話します。

 

 国民が納めた年金を一元的に管理しているGPIFは、その資金の大半を運用しています。

 その運用割合は現在、日本株・外国株・国内債券・外国債券を概ね25:25:35:15の割合で運用しています。

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 6年前迄、債券が7割以上と安全運用だったのに比べて、積極的な運用に変更となっています。

 そして、2019年末で約168兆円の運用資産を保有していました。

 この金額に、運用割合+誤差を当てはめると、大まかですが、

   日本株42兆円・外国株44兆円・日本国債59兆円・外国債24兆円

となります。

 今年になってGPIFは、日銀が買う日本国債が枯渇気味なことや、円安誘導を狙って、一部規定の解釈を変更し、日本国債を2~3兆円売って、外国債券を2~3兆円買い、その保有割合を一部変更しました。

 市場の変動に応じて、一定率まで運用割合の変更が認められていますので、実際の保有額は上記と異なりますが、大まかな金額で話した方が分かりやすいので、この金額で話を続けます。

 

 株安の影響で2019年12月末に比べて現在、約24兆円の運用損が出たので、現在の運用資産は約144兆円へと大幅に減少しました。

 この資産額に、株の下落率を25%だとして当てはめると、現在の運用資産の金額は

   日本株32兆円・外国株30兆円・日本国債56兆円・外国債26兆円

という推定となります。

 外国債だけは、主にアメリカ国債の値上がりのお蔭で1兆円ほど利益が出ていると思われますが、株で約25兆円の損失が出てしまっています。

 

 GPIFには、四半期ごとの運用成績を公表することが義務付けられていることから、成績が悪い時には少しでも良く見せようと、四半期末にドレッシング買いを入れて誤魔化をしてきたのが実情です。

 特に今四半期は、四半期ベースでは史上最悪の運用成績となっている(以前は債券主体の運用だったので損失は少なかった)ことから、これを少しでも良く見せたいという焦りがあるのです。

 そこで、株の暴落の影響で、現在144兆円の資産の運用割合が

   日本株22%・外国株21%・日本国債39%・外国債18%

と、株が減って債券の割合が増えたことを悪用し、「とりあえず3月期末に向けて、日本株だけを規定の運用割合の25%付近に戻そう」と、一気に買っているというわけです。

 FRBのゼロ金利復帰のお蔭で、債券で損失が発生しなかったので、規定よりも保有割合が増えてしまった債券を数兆円分売却し、そのお金で新規に日本株(外国株もですが)を買う資金を捻出したということなります。

 これが、いくら株で大損を出しても、債券で損失を出さなければ、新たに日本株を買うことができる(今回は日本株で約3兆円でしょう)というカラクリです。

 ただ、GPIFは基本的に長期保有方針なので、MSCI等を基準に銘柄を選別して、今後値上がりが見込める個別銘柄を買います。

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 一方投機筋は、昨日も今日も日本株の225先物を売ってきています。

 外国人投資家からの日本株実需売りも止まりません。

 NY株は、昨日1050ドルほど反発しましたが、今日のダウ先物は-1000ドルと昨日の上げを帳消しにする値動きとなっており、今晩も世界的な株安が予想される状態です。

 ところが、日本株は今日の午後2時ころまで、GPIFの巨額買いが優勢だったことで、TOPIXの異常な上昇が止まらない状態でした。

 今回のGPIF買いで疑問符が付く部分は、個人に配当・優待権利取りで人気のある電鉄・電力株等を大量買いし、それが個人の権利取りの買いを誘発して、10%以上の大幅高になる銘柄が続出してしまった部分ではないでしょうか?

 おそらくこれは、そのようになることを見越して、狙って買ってきたものと思われます。

 普段、売買代金の少ない銘柄が多いので、年金が多めに買えば、急騰してしまいますからね。

 そして、このGPIFの買いは今月末まで色々な形で続く可能性が高いと思われます。 

 

 以上の記事は、あくまで個人的な分析の結果を書いたものですが、大筋は正鵠を射ていると思います。

 例えば今日、KDDIは6%安なのに、ドコモは7%高とか、トヨタは2日間で10%超高を付けたのに、トヨタ以外の自動車関連株は軒並み安く終わっている等、特に材料もないのに、こんな不自然で歪な相場は非常に珍しいことです。

 昨日と今日における、相場全体の下げ止まり・株高の雰囲気の醸成は、GPIFの一手買いだけで成り立っていたとみて間違いないでしょう。

 おそらく、TOPIXだけの異常な上がり方や、先週までの平均売買代金と比べて、この2日間の売買代金が急増している状況等から、GPIFは昨日・今日で個別銘柄を数千億円~1兆円近く買い入れたと推定されます。

 

 株安を止めたいという政府筋の意図も入って、今回は、今までに見たこともない金額を投じての強引買いが行われました。

 ところが、世界の投機筋は、新型肺炎の感染状況の悪化が止まらず、大部分の国が今後最低1か月程度は、国境閉鎖をするという非常に厳しい流れになっているのに、この流れに逆らう売買を特定の公的機関が実施した反動は必ず出ます。

 GPIFの買いが消えたら、無理矢理上がった分、下がるということです。

 ですから、特にGPIFが今回買い入れた結果、急騰してしまった銘柄の反落には、気を付けた方が良いと思います。